こんにちは、Moccoです。
世界はますます複雑になっています。産業革命時代から行われてきた、数学や言語、科学などに細分化された科目ごとに学習を行うという、高等教育のアプローチにも変革が必要です。
評価の高い大学が共有する特徴のひとつが、教育と伝統の機関としての長い歴史ですが、ものづくりの手法 とその教育方法の崩壊は、至るところで生じています。そのため、大学が変化の波に乗ることができなければ、未来において大学と学生たちが、産業と仕事の革命、さらには複雑でグローバルな社会の需要に付いて行くこともできないでしょう。
高等教育は、21 世紀の学習と文化、未来のリーダーや研究者を育成に適応する必要があります。そして、それは現在の大学での体験とは全く異なるものになると思われます。

今や世界はグローバル化し、学際的で、大規模にネットワーク化された多元的なものとなりました。多くの産業や職業個々の役割が深刻な苦境に直面しています。建築業界を例に取ってみると、建築家の役割は、プラン作成を行う設計者から、持続可能性に関する複雑な問題や、ビルのスマートな使用方法や管理方法を考える立場へと変化しています。こうしたこと全てを従来の建築学の学位ひとつで教えることができるでしょうか? それが問題なのです。
では、教育の未来と、今日のニーズに応える新しいシステムの構築は、どうなるのでしょうか?
変わりゆく時代に対応するため大学がどのように適応していくであろうかを世界の有名大学の取り組みを例に考えてみましょう。
講義は不要
1 時間の講義を受けるために朝 8 時に教室へ集合する、という日々は徐々に失われていくでしょう。従来型の教授法は終焉の時を迎えており、それは反転授業という新たな概念に端を発しています。
教授が教室の前に立って講義を行うのでなく、学生が助言や指導、他の学生との協働を求めて教室に出向く。講義の「情報」は、ネットワーク経由で映像や電子書籍などで提供される。学生は、その情報を元に予習を行った上で教室にやって来て、その知識を教授や他の学生と直に触れ合うことで深める。
反転授業への流れ同様、「作ること」をベースとする教授法へのニーズも高まっている。ものづくりを通じて学生たちに学ぶことを教える、このアプローチの早急な適応は重要です。大学から図書館まで、3D プリンター、CNC マシンなどを備えたスペースを設置する傾向が全米で高まっています。学生が知識を素早く吸収するには、自分の手で実際にものづくりを行うのが優れた方法だからです。

学位だけではない: マイクロクレデンシャル
キャリアにおいて、「単一」の役割を担うという制約は崩れつつあります。分野を超えたスキルと知識がより顕著に必要とされるようになってきているのです。
ものがデザインされ生み出される手法は、さまざまな業界をまたいで収束しつつあります。建設業界の各社は、住宅ユニットや外壁、配管などの部品をプレファブリケーション方式により製造、組み立てることで、製造業界の企業のように業務を行っています。また家具やボート、自動車を設計する建築家もいます。
学位という枠の拘束を解くという動きが出始めています。文学士や理学士、経営学修士など単一の学位の取得でなく、何かを習得するごとに、細分化された学位の「マイクロクレデンシャル」(細分化された資格や技能を個々に認めること) が行われ、デジタルバッジが得られるようになっています。最終的に、これらのマイクロクレデンシャルとデジタルバッジは文学士に相当するものになるかもしれないが、さまざまな分野における実践的な問題解決能力、クリティカル シンキング、ソフトウェア使用能力など、達成された全項目は成績証明書へ明記されるようになります。
重要なのは学生経験
現在、キャンパス外での活動は、学生の体験として、かつてないほど重要なものとなった。それはもはや留学プログラムだけに留まりません。大学は、地元の経済界や大企業、NGO、その他の団体など、学習の機会をキャンパス外に広げるという考え方にに適応する必要があります。
夏季のインターンシップ先を見つける責任は、長く学生に委ねられていました。だが、インターンシップは年間を通じて大学での学習と同時に進められるべきです。また、インターンは新規採用の源となることも多いため、夏が終わっても能力の高い学生との関係を継続させることで、企業は学生の検討を続けて、トレーニングを継続することができます。インターンは様々な部署を回って自身の幅を広げ、最適な分野を見つけることが可能です。
成績評価はいらない
評価方式は 150 年前に始まりました。今の時代に適応するにはどうすればいいのでしょうか。
企業でインターンを行っているビジネス学専攻の学生に、反転授業の教材を実社会で応用する一環として、どんなテストを出すべきでしょうか? 学生が突き当たる様々なルートの全てを考慮し、どう成績評価へまとめればいいのでしょうか? 今のところ、それは不可能です。
学習は教室や学外での経験、オンラインなど至るところで行われているから、キーになるのは教育の統合です。知識を得る経路でなく、それらのつながりが重要です。だからこそ大学には、学生が必要とする、こうした統合が必須なのです。

現在、大学が統合に取り組んでいる方法のひとつに、e ポートフォリオと呼ばれる、比較的新しい手法です。学生は入学から卒業まで、e ポートフォリオを継続して作成していくことによって全ての学習結果がセントラル データベースに集積され、学部メンバーのグループごとに毎年評価されます。
これは、もはや成績評価に留まりません。重要なのは学習コミュニティなのです。また学生にとっては、仕事に必要となるツールを学内で習得することも重要になっています。
これからの大学
今後、大学の在り方は劇的に変わっていくでしょう。これは必要な変化であり、避けようのないことです。学生それぞれが、学習に関しては大きく異なった解釈を携えて入学し、インターネットとソーシャル ネットワークを駆使して成長していきます。学生たちは、時と場所に関係なく、バーチャルに、またコラボレーティブに学んでいくでしょう。今や大学は教育のリーダーシップという立場で、21 世紀のリーダー、研究者や技術者を輩出するための新たな道を切り開こうとしています。