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A判定でも落ちる…」今年も私大入試の難化が止まらなかった

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こんにちは、Moccoです。

2019年の大学入試の結果がほぼ出揃いました。ここ数年、私立大学の難化が指摘されていまするが、「今年もさらに難化した」との声が教育関係者から上がっています。

難化の背景には、文部科学省が進める「入学定員管理の厳格化」があり、大学が定員を大幅に超過して入学させた場合は「私立大学等経常費補助金」を交付しないとして、文科省は、この超過率の基準を2016年から段階的に引き下げてきました。

ただ、2019年は前年と同じ基準だったため、今年は難化に歯止めがかかるのではと期待されていたのですが、結果的には受験生にとっては厳しい状況となりました。

 

「A判定」でも受からない

大学入試がほぼ終わりを迎えた3月中旬、東京の某中堅私立高校からは、こんな声が聞こえてきた。

「今年は志望校に受からないばかりか、大手予備校の模試でA判定が出ていた大学にも全く受からないケースが続出しました。私立大学の文系学部の難化はこれまで経験したことがないほどで、大変なショックを受けています。難関大学に限らず、全体的に私立大学が難化しているのではないでしょうか」

入学定員管理の厳格化もひと段落し、今年は去年ほどの難化は見られないのでは、とこの学校は考えていたといっています。補助金が不交付となる超過率の基準は去年と同じ「大規模大学は定員の1.1倍、収容定員が4000人から8000人の中規模大学は1.2倍」。各大学は毎年合格者を減らしてきたが、今年は昨年並みの水準だろうと予想していたのです。

実際、早稲田大と慶応義塾大の合格者はほぼ昨年並みで、上智大は合格者数を増やした。志願者数は3大学とも減少している。受験生が難関校の受験自体を避ける傾向にあったようです。

「MARCH」と呼ばれる明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大でも、法政大以外は合格者数を昨年よりも増やしました。志願者は2学部を新設した中央大以外は減少。こうした傾向だけをみれば、昨年より入りやすくなったと思えます。

にもかかわらず、受験生や関係者が、今年の私立大学の文系学部は全般的に難化したと感じる原因はどこにあるのか。

大学入試に関する調査・研究や情報提供を行なっている大学通信の安田賢治常務は、「受験生の安全志向がさらに強まったため」と指摘しています。

MARCHにトップ進学校から大量の合格者

安全志向がさらに強まったと安田常務が指摘するのには、主に2つの理由がある。
1つは、特にMARCHに多くの合格者を出した高校に、これまでは見られなかった進学校の名前が現れていること。

例えば、埼玉の県立高校の浦和高校と浦和第一女子高校。両校は、これまでMARCHの合格者はそれほど多くはなかったが、大学通信の集計によると、浦和高校は合格者を125人増やして401人。明治大学の合格者数の全国トップに立った。浦和第一女子高校もMARCH全体で合格者を151人増やして418人になり、MARCH全体の合格者で4位、立教大学の合格者数は全国トップに立っている。

浦和高校は東京大にも多数合格者を出す、埼玉県トップの進学校。浦和第一女子高校も早稲田大、慶応大、上智大に毎年多数の合格者を出す学校です。

つまり、近年の私立大学の難化を受けて、こうしたトップクラスの高校の生徒も「すべり止め」で受ける大学を増やしたため、MARCHで大量の合格者を出したと言えるのです。

その傾向が全体に表れているのか、いわゆる「日東駒専」の難易度も上がっています。昨年まで合格圏だった偏差値の受験生は、今年は厳しい結果になったという。東洋大、駒澤大、専修大では志願者数も増えた。日本大はアメフト部による危険タックル問題とその後の対応に批判が集まったため、昨年より1万4000人以上志願者を減らしたが、入りやすくなったわけではなかった。

難化は「日東駒専」にとどまらない。偏差値50以下の大学でも志願者が増えている。安全志向が顕著になって、以前よりもすべり止めの大学を受けるようになり、その結果、どの偏差値帯でも、簡単に受かるという状況ではなくなっているのだ。

指定校推薦を利用する学生が激増?

安田常務は、安全志向が強まっているもう1つの理由として、今年は例年以上に指定校推薦やAO入試・推薦入試を利用して合格した受験生が大幅に増えた可能性があることを挙げています。

「大学関係者に話を聞くと、例年以上に指定校推薦の応募がたくさんきたと話しています。これまでは大学から高校に指定校推薦の枠を出していても、進学校の場合は応募がないという状況が当たり前でした。それが、今年は応募してくる学校が増えたそうです」

指定校推薦の場合は、受験すればほぼ100%合格できる。偏差値で中堅から下位の大学は、これまで推薦を出しても、受験する学生は多くなかった。それが、推薦を利用する受験生が増えると、一般受験での合格者を減らさなければならなくなる。その結果、それらの大学でも狭き門になってしまうのだという。

前出の高校でも、すべり止めとして受験を薦めた大学が、指定校推薦でかなりの人数を合格させていたことを、あとから知ったという。

「ある大学は例年合格している偏差値帯の生徒が受けても、今年はことごとく不合格になりました。その原因は、今年は定員の半分近くを指定校推薦で確保していたためだ、と聞き、なるほどと思いました。MARCHを含め、多くの大学が推薦を増やす傾向にありますし、一般入試だけでの進路指導はこれから難しくなると感じています」

大学通信の安田常務も、高校から悩みを聞いている。

「中堅クラスの進学校では、特進クラスの生徒はほとんど一般入試で受験をします。しかし、今年は、指定校推薦やAO入試などを積極的に活用した一般クラスの方が、最終的に特進クラスの進学成績を上回る、というケースも出てきているようです」

来年はさらに難化?

指定校推薦を積極的に活用するほど安全志向が高まった背景には、これまでの合格者数の抑制に加えて、2021年に控えた大学入試改革の悪影響がすでに出始めていることが挙げられる。

大学入試は2021年の試験で、大学入試センター試験に代わって大学入学共通テストが導入される。英語では外部検定試験の導入も始まる。つまり、来年の受験生は、翌年から受験の制度が大きく変わるため、「浪人したくない」という思いが強く、安全志向が強まる可能性がある。その傾向が、すでに今年の受験生にも見られたようだ。

安全志向が強まったきっかけは、入学定員管理の厳格化であることは間違いない。さらに昨年には「地方創生」の一環として、東京23区内にある大学は今後10年間定員の増加を認めないことなどを盛り込んだ法律が成立した。

こうした政策の悪影響と、大学入試改革が重なり、来年は首都圏の私立大学のさらなる難化が予想される。そして再来年以降はどうなるのか、まったく予想もできない状況です。

国の政策に振り回された受験生はたまったものではない。大学通信の安田常務は、厳しい状況を理解した上で、志望校の合格に向けて勉強した方がいいとアドバイスをする。

「入学定員管理の厳格化は、大変罪作りな施策だったと思います。一番迷惑を被ったのは、首都圏をはじめとする大都市圏の受験生です。思いつきのように始まった政策で、受験生が受けている迷惑は計り知れないものがあります。

しかし、不安になりすぎるのも問題です。どの偏差値帯の大学も難化していますので、受験生は安全策ばかり考えて入れる大学を選ぶよりも、自分が入りたい大学を選んでチャレンジした方がいいのではないでしょうか」

今年の受験生は「追加合格」に注意

ところで、入試はほぼ終わりを迎えたが、志望校に合格できなかった受験生も、3月末までは追加合格の可能性がある。

私立大学では昨年から補欠合格が多く出るケースが目立っている。補欠合格候補者の通知をもらっている人はもちろんだが、中には大量に入学辞退者が出た大学で、補欠合格の候補者になっていなくても追加合格するケースがあるという。昨年にも増して難化が進んだ今年は、大学が補欠合格候補者を多めに出している可能性もある。

合格を通知する方法は、大学によって違う。電話をかけてくる大学もあれば、郵送やメールで連絡が来る場合もある。昨年は追加合格を出したものの、届いた郵便物を放置するなどして、気づかなかった受験生もいた、と大学関係者は話している。過度な期待はできないにしても、受験生は補欠合格や追加合格の可能性は頭に入れておいた方がよさそうです。